from3.5次元to浄土
俺と音盤の対峙一部始終。(text=色即zk)

vol.1

宇宙漂流/space expliosion
テクノではなくむしろバイアグラでしょうこの場合。近年のジャーマン・ロック勢復活の話なんですが、大変なことになってますよ実際。人力テクノなんて言ってる人もいるようですが、その「人力」の剖分が並大抵でないあたりが恐るべしゲルマン人。放っておけば一生ラリったまんま好き勝手し放題に暴れまわって下さいます。アッチのほうのおクスリと回春作用のあるやつとの食い合わせもすこぶる宜しかった様で以前にも増して無謀さ無軌道さに拍車かかってます。で、この "space explosion"なんですが、正体はグルグルのマニ・ノイマイアーさんやファウストのヴェルナー・ディーアマイアーさんをはじめ豪華極まる顔合わせのセッション盤。決して白熱することなく各人好き勝手に「逸脱」しまくる様が見事です。電波系ミュージックに興味のある人の入門用として最適。
weight/rollins band
もうこれ以上は強くなることができない。それでもなお貴方がさらに強くあることを私に望むのは何故か。これ以上に強くなることに一体どんな意味があると云うのか。全身に張り付く肉が隆起し、むしろ己を苦しめ、痛めつけさえする。しかし暗く絶望するほどに、自己を鍛練してしまう正直者もある。ロリンズの筋肉は実戦の証であるゆえに、むろん美しくはないが、ふてぶてしいものにさえ見えぬところにこそ脅威的な面がある。ただ「負けてはならぬ」と踏ん張り続けてきた歴史を臆面もなく物語るものだ。本作に収録された何曲かには溜めていた涙を少しずつ絞り出すような歌唱さえ聞かれる。ハードコア・パンクの到達点を明らかにした前作"the end of silence"をも凌ぐ名盤中の名盤。
silentintroroduction/moodymann
ピート・コージー氏、或はつのだ☆ひろ氏と見まがう異形を持つこの人物こそ噂のムーディーマンである。テクノ大勃興以来すっかり廃れた感のあるハウス・ミュージック・シーンですが、そのような時にこそこんなに美味な音盤があるもんなんですね。いかにもお安く組み立てられた楽曲はいい湯加減のだらしなさを醸しつつ、時に冷や汗かかす毒を隠し持っていたりして侮れません。それにしてもまたしてもデトロイト産。MC5、P-FUNK、UR、ムーディーマン。何か因果者を呼び寄せる磁場でもあるんですか? 
live at the village vanguard/albert ayler
裸足で行かざるを得ない。或は身に付ける布きれの一枚すら奪われ尽くしている。しかし表を走り回り、歌いまくらずにはいられない位に喜びが溢れ、説明することのできぬ涙が止めどもなく流れ続けているのだ。「偉大なるもの」の光を浴びてしまった人が、この世にあり続けることは難しい。しかし今もってアイラーの御霊が不滅であることは、むしろフェダインら日本の真性ジャズによって証明され続けている。人は時に力尽きて死にたくなったりもするが、崖淵で思いとどまらせる術が常にここにはある。アイラーを聞くことで命を拾った者の数は決して少なくはない。我々はアルバート・アイラーの御霊にもっと感謝せねばならないのだ。
are you ra?/ゆらゆら帝国
俗に異端と呼ばれる者はこの世に数多く存在するが、むしろそのことは俗世間がいかに惑わされ易く、また当てにし難いものであるのかを端的に示してもいる。トレンドとか云うまやかしの犠牲にいったいどれほど多くの優れた表現が埋もれ、苦汁をなめ続けてきたのかを今からでも心に刻み付けねばならない。永久革命の語の重みを知れ。ゆらゆら帝国に名曲は既に多いが、「最後の一匹」という曲の中では「突然変異の俺の種族は近い将来絶滅するんだそのたった一つぶの種を少しでも遠い未来へほうり投げるためだけに俺は一生を棒にふってるんだ」と、暗くも明るくもない声ではっきりと歌われている。坂本慎太郎の声には、覚語をきめたものだけに特有の澄んだ輝きがある。また「されたがってる」、「わかって下さい」といった曲の多くには共に生きてゆくもの達へ愛情がこれ以上はない位に大切に歌われていて、是非とも清純な女性にこそ聴いてもらいたい。我々はゆらゆら帝国に受け継がれた正統なロックのともしびを絶やしてはならない。

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