from3.5次元to浄土
俺と音盤の対峙一部始終。(text=色即zk)

vol.2

live at the liquidroom tokyo/jeff mills
引力の法則に反し軽々と無重力状態に突入してしまえるような技や、空間をぐにゃりとねじ曲げ瞬時に消えてしまったり、突然また現れたりする技、原始空間にさまよう霊の群れを指先のひとつに一気に呼び寄せてしまう技、具体的な言葉は何ひとつ発していないのに意識そのものへと直接に語りかけてしまうような技の在りようがあまりにもあからさまに示されるという意味においてこそジェフ・ミルズはジミ・ヘン的である。ジェフ・ミルズ=宇宙人説は今も真剣な面持ちで語り合われている。一体どのような技を使って少なくとも2枚はあるレコード皿のピッチおよびテンポがあれほど正確に、しかも瞬時に合ってしまうのか、驚異的なエフェクトの数々はいかにして生み出されているのか? 初来日に際し、多くの者がその真相を知ろうと詰め掛け、信じられない光景を目の当たりにした。驚くべきことにミルズは直接に手でレコード盤を回転させていたのだ。以来ミルズを神と畏怖する者が後を断たないとも聞く。テクノ界のみならず現代全音楽界の奇跡。
disallow/high rise
90年代に突入以来、日本のアンダー・グラウンド・シーンは未曾有の活況を呈しており、今や明らかに世界一と呼べる膨大かつ充実した音楽シーンを形成している。嘘だと思うなら貴方自身の耳で確認すると良い。聴くべきものには、渋さ知らズやフェダインといった真性ジャズからグラウンド・ゼロ、オプティカル8、アルタード・ステイツなどをはじめとする即興ロック、ボアダムズに象徴的な大阪発の奴ら、或はハード・コア・パンク/ラップ、テクノ、純ノイズなど本当に枚挙に暇がない。我々は何と幸運なのか。今こそ因果律の在処に感謝をせねばなるまい。その宝庫にあってひときわ強い光を放つ至宝こそがハイ・ライズである。古来より絶え間なく続く轟音ギタリスト史上にハイ・ライズの成田宗弘を凌ぐ存在はもはや皆無であり、そこはピート・コージー、或はジミ・ヘンドリックスと並ぶ有史以来の絶頂でもある。漆黒の闇を、どこまでも続く滑走路を焦がし、巨大な爆撃機が飛び立つ。閃光が放たれ、街は爆音とともに一気に焼き尽くされていく。成田のギターはその爆撃音そのものである。必聴。
space ritual/hawkwind
そういえばザッパ先生の大名曲「インカ・ロード」は未確認飛行物体に関するものでもあったが、言わずもがなのサン・ラ大・大先生をはじめ、Pファンクの皆さんやゴング関連の方々も皆それぞれの惑星から地球へと降り立った人々である。当然ホークウィンドがらみの方々による自らの出生地=宇宙における哲学や風俗、習慣などをこの世(地球、現世)に広く知らしめるための活動も力強く継承され続けている。とりわけニック・ターナー氏による94年版「宇宙の祭典」には四半世紀前と全く変わることのないスペース・ロック魂がしぶとく貫かれ、もはや鬼気迫るものがあります。このオリジナル版「宇宙の祭典」には後にモーターヘッド首領として世の良識的ロック・ファンの度肝を抜きまくったレミーもベースで参加、宇宙ロック道を一直線に加速させつつ、暴走に一役買ってます。一聴、単純かつ単調なリフレインが脳ミソを「あちら側(=宇宙)」へと押し拡げ、あらゆる電子音がたっぷりと愛撫。気付くと七色忘我。はまるとこわい耳から摂取するドラッグ。
hell on earth/mobbdeep
過酷な状況を生きる者達の気迫と美学が溢れだす名盤。ラップ・アルバムの破壊力とはドキュメント性とエンタテイメント性がいかに高次元で結合されるかにかかっているということを見事に証明しきっている。恐い物見たさからモブ・ディープを聴き始める奴も多いが、中毒性は極めて高く、聴くたびその質の高さに唸らせられる。かくいう俺自身今だに最も世話になる機会が多いハード・コア作品でもある。極太のべース・ラインに流麗なストリングスが情感溢れる調べを重ね合わす時、二人組の芸達者の男達による雄大な任侠伝が幕を開ける。
aces back to back/rolland kirk
もし眼から映った物だけが「映像」だと思っているであれば、そいつの眼はふし穴である。つまり我々の脳内スクリーンには森羅万象が瞬時に呼び出され、切り換え可能であるようにつねに意識されていなければならないというだけのことである。また時にはあえて外界からの情報を遮断する努力も忘れてはならないことのひとつである。所詮、一個人が見聞きすることのできる情報の量など、我々の意識に蓄えられてきた太古からの記憶には遠く及ばぬと知らねばならぬ。わざわざ目を見張るに値する情報は実はそう多くはないと俺は思っている。ローランド・カークは始め夢の中で3本のサックスを同時に吹く自身の姿を「見た」のだという。その自分の姿を「最高に格好イイ」と思いそれを素直に実行に移す姿勢にこそ見習うべきものがある。また全ての優れた音楽が映像的であるのは当然だが、ローランド・カークにとって「映像」とはすなわち「音」であり、「音」とはすなわち「映像」であると思わせるほどに圧倒的なイマジネイションがこの4枚組ボックスには詰まっていて、まさに心眼である。ザッパのジャズ・ロックにも多大なる影響を与えたことも留意すべき偉大なる先達。

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